8月25日、夜明け近くの黒い空。
猛烈な雨風が菊池の街を襲った。
地鳴りのような低い音。
窓を叩く横殴りの雨と風。
度々起こる停電…
怖い怖い夜だった。
次の日学校へ行くと、一瞬自分の目を疑った。
胸がギューっと締め付けられた。
大好きなしだれ桜が…
前の前に横たわっていたのだ。
何にも迷惑をかけないように…
ひっそりと倒れたような。
小さな小さな隙間に、大きな大きな桜が収まっていた。
「この桜を助けたい」
学校長が言って下さった。
嬉しかった。
雨の中、樹木のお医者さんがしだれ桜を救ってくれた。
再び立ち上がったしだれ桜。
大きな枝がたくさん切られてしまったが…
その分、今まで日の当らなかった小枝にいっぱいの日が差すのだろう。
いつの日か、また…
しだれ桜の木の下で。
みんなの笑顔が咲きますように。